【獣医鍼灸師が解説】犬の鍼灸治療とは?仕組み、効果、費用から季節のケア(湿邪)まで

鍼灸治療とは?

鍼治療は人間の治療でもおなじみですが、東洋医学の一種です。様々な太さの鍼を用いて、体の表面の各症状のツボ(治療点)に刺激を与えることで、自然治癒力や免疫力を向上させて、健康な状態に戻して病気を改善させます。

鍼灸治療の基本と効果

犬の場合も人間と同じように、「自律神経の調整」「痛みの緩和」「自然治癒力の向上」といった効果があります。 具体的には、椎間板ヘルニア神経系の疾患肝臓疾患アレルギー疾患といったものへの効果が見込まれます。

病院とご自宅、2種類のケア

病院での治療

専門的な診察に基づき、最適なツボへ施術を行います。

お家での治療

灸棒
灸棒(きゅうぼう)

お灸を使った簡単な治療であればご自宅でも可能です。当院では「灸棒(きゅうぼう)」というご自宅用お灸セットをお渡しし、使い方もその場でお伝えしています。継続することで血液循環がよくなり、免疫機能が向上します。特にシニア期のワンちゃんは冷えによる免疫力低下に注意が必要です。

痛みはほとんど感じない安心施術

犬の鍼灸治療は、人間のものと同じく非常に細い針を使用するため、多くの場合、痛みはほとんど感じられません。

リラックス効果

針自体が髪の毛ほどの細さなので感覚が少なく、治療中にワンちゃんがリラックスして寝てしまう様子もよく見られます。

当院のこだわり

当院では鍼に電気を通す低周波治療(電気鍼)は、動物の緊張を招く可能性があるため行いません。鍼を優しく入れ、一歩一歩快適な状態で受けられるよう心がけています。

使い捨ての安心

当院で使用する鍼は全て単回使用使い捨てを使用しております。

鍼灸治療のメリット・デメリット

椎間板ヘルニアの治療において、手術ではなく鍼灸を選択される方も多いです。

メリット

  • 麻酔を使わないので、体に優しい
  • 高齢の子にも負担がほぼない
  • 手術のような高額な費用がかからない
  • ヘルニアの再発があまりない(再発しても再度の鍼灸で治るケースが多い)

デメリット

  • 手術と比べて治療に時間がかかる
  • 個体差により効果に差がある

特に高齢の子の場合、手術よりも鍼灸を選択される方が多いです。かかりつけの獣医師と相談し、最善の選択をしてあげてください。

鍼(ハリ)とお灸(キュウ)の仕組み

刺しても痛くない鍼

鍼の太さは0.12mm〜0.24mm(髪の毛は約0.18mm)。当院ではさらに細い0.14mmのステンレス製使い捨て鍼を使用します。ツボを刺激し、エネルギーの流れを改善します。

熱くないお灸

皮膚の上に艾(もぐさ)を置いて火をつけますが、熱くはありません。ツボに熱刺激を与えることで体を温め、免疫機能を高めます。鍼は深部に直接届き、お灸は表面からじんわり効くイメージです。鍼は余分なものを抜く「瀉(しゃ)」、灸は気を足す「補(ほ)」の役割を担います。

東洋医学の考え方:気・血・水のバランス

鍼灸療法は、体内の「気・血・水」のバランスを取り戻すことを基本としています。

」の流れ

生命力やエネルギー。滞ると不調の原因になります。

」の循環

栄養や酸素を供給。鍼灸で循環を改善しバランスを回復します。

水(津液)」の調整

体内の潤いや関節の滑りを維持。過剰な湿気や乾燥を改善します。

鍼灸治療とオゾン療法の相乗効果

当院では、鍼灸と併せて「オゾン療法」をおすすめする場合があります。

痛みと炎症の軽減

オゾンの抗炎症作用と鍼灸の鎮痛効果が組み合わさり、緩和が強化されます。

免疫システムの強化

オゾンによる活性化と鍼灸による調和で、防御力を高めます。

老化は後ろ脚から:シニア犬のサポート

後ろ脚の健康をサポートする方法

高齢犬は、筋力低下による歩行制限やバランスの崩れ、関節の軟骨減少などの変化が現れます。

家庭でのケア

滑らない床(コルクが最適)の整備、マッサージ、温熱療法が有効です。

栄養とサプリメント

グルコサミン、コンドロイチンに加え、炎症を抑えるオメガ3脂肪酸、筋肉維持に役立つHMBの活用も検討しましょう。

梅雨の不調「湿邪(しつじゃ)」対策

吐き気、食欲低下は気候が原因かも!?

梅雨時期の吐き気やだるさは「湿邪」が原因かもしれません。体内の余分な水分を排出する食養生をおすすめします。

おすすめ食材

えだまめ

消化吸収を高め、気を補う。

かぼちゃ

疲労回復。

あずき

利尿作用。

きゅうり+昆布

水分代謝を良くする。

費用とペット保険

費用相場

一般的に1回5,000円〜15,000円。当院では継続しやすい費用設定を心がけています。

鍼灸治療にペット保険は使えるのか?

期間

最初は週1〜2回、改善が見られたら2週に1回、月に1回へと移行します。

ペット保険

アニコム保険など、治療目的(症状がある場合)であれば適応可能です。詳細は各保険会社へお問い合わせください。

鍼灸治療改善例

腰痛と腎機能低下の小型犬

「トイレが間に合わない」「起き上がる時に腰が重そう」という症状で来院。触診で腰痛を確認し、鍼灸で全身の気を整えました。帰宅後、飼い主様から「滑らかな動きになった」と嬉しいご報告をいただきました。定期的な治療が健康維持に効果的です。